世界初のエシカル蒸溜所って何?
ジンとはどんなお酒なのかご存じでしょうか?
ベースとなるスピリッツに、ボタニカルというハーブや果皮、スパイスなど植物由来の素材を数種類加えて香りづけした蒸溜酒です。ジン特有のツンとする香りの元となるのはジュニパーベリー(和名セイヨウネズ)という植物の実で、そのほかにどんなボタニカルを組み合わせるかがジンの個性となります。クラフトビール同様、こだわりをもつクラフトマンシップによって作られた少量生産の個性的なジンを、特にクラフトジンと呼んでいます。
クラフトジンを手がける蒸溜所としては、東京都内で3つめの蒸溜所として誕生したのがここ「東京リバーサイド蒸溜所」。
運営するエシカル・スピリッツ社のCOO小野力氏に案内してもらいました。
「蔵前は "東京のブルックリン"ともいわれていて、ものづくりに携わってきた職人のまち。世界にジャパニーズジンを発信するのにふさわしい場所として、この地を選びました」と小野氏。
かつては隅田川の水運の要衝として、多くの米蔵が集まっていた蔵前。ここで日本各地の酒蔵から酒粕を集め、ジンの原料として使っていくといいます。
「え? ジンの原料が酒粕なんですか?!」
「はい、ジンのベースとなるスピリッツを酒粕から作ります。『粕取り焼酎』といって酒粕から作る焼酎がありますよね。一般的な蒸溜所はクセのないグレーンスピリッツ等を専門業者から購入していますが、私たちはベーススピリッツそのものにも個性を持たせて作り出すことからはじめています」
エシカルスピリッツ社が手がけた第一号のクラフトジン『LAST EPISODE 0 -MODEST-』(2020年3月発売)は、鳥取県の酒蔵『千代むすび』の酒粕から製造されたもの。口に含むと、日本酒由来の吟醸香がほのかに漂います。
「上質な酒粕が産業廃棄物とされてしまうのはもったいないと思いませんか。廃棄されないまでも畑の肥料となるくらいしかなかった酒粕を原料として買い取り、新たな味わいのクラフトジンにアップサイクルして、日本酒の酒蔵を経済的に支える手助けもしたい。そんな思いで、世界初のエシカル蒸溜所、エシカル・スピリッツと名乗ることになりました」(小野氏)。
古い5階建てのビルを再生した「東京リバーサイド蒸溜所」の1階には最新型の蒸溜器が据えられています。左側の瓢箪型のタンクの中に原酒とボタニカルを入れ、タンクの表面で80〜90度の湯を循環させて気化させます。パイプを通って右側のタンクに香りづけされたジンが溜まっていきます。最後に、アルコール度数を40数%程度になるまで加水して完成です。
「浸漬」の工程でどんなボタニカルを選び、どのくらいの量と時間を漬け込むか決めるのが腕の見せどころですが、そのボタニカルのレシピづくりには今注目の若手醸造家、山口歩夢さんがあたっています。
蒸溜所は一般の見学も可能で、1階はカクテルとティースタンドもオープンします。
2階には、カウンター中心のバー&カフェ「STAGE」が7月にオープンします。同社のクラフトジンを使った創作カクテルや、お酒に合う料理を楽しむことができるアンテナショップ的な場所です。
東京スカイツリーを向こうに望むビルの屋上には、ボタニカルガーデンが設けられています。この場所を使って、定期的にイベントなどが開催される予定。多彩なハーブは2階で提供する料理やカクテルに添えるために育てているとのことですが、ただ眺めていても心癒やされる空間です。
東京リバーサイド蒸溜所
(The Ethical Spirits & Co.)
- 所 在 地
- 台東区蔵前3-9-3臼井ビル
- 営業時間
- 13:00〜19:00 (1階 カクテル&ティースタンド)
17:00〜23:00(2階 バー&カフェ ※7月オープン予定) - 定休日
- 月曜(休日の場合は営業)
- URL
- https://shop.ethicalspirits.jp/
※この記事は2021年6月24日時点での情報です。