クリスタルのような飴細工に世界が驚いた
日本の伝統文化のなかでも、江戸時代に始まる庶民のサブカルチャーとして現代までひき継がれてきたのが「飴細工師」の技。世界には多彩なキャンディーアートがありますが、日本の飴細工の特徴は「ひとつの飴のかたまりから、ハサミと指先だけでかたちを造形する」という点にあります。
たとえば中国には、「糖画(飴の絵)」と呼ばれる、べっこうアメを使って熱いうちにすばやく絵を描くものがあります。
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フランス菓子の世界では「シュクル・ティレ(引き飴)」といい、飴をひきのばして光沢を出しながら、花びらやリボンを作ったりするテクニックがあります。
いずれもパーツごとに作って、貼り合わせながら造形していくというものですね。
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一方、「浅草 飴細工 アメシン」の顔ともいえる飴細工とは...
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90°もある熱い飴をまるめて棒の先に固定し、冷めて固まるまでのわずか5分ほどの間にリアルな造形に仕上げていくさまは、まるで神業です!

いまにも尾びれが動いて泳ぎだしそうな金魚!

このスーパーリアルな飴細工の考案者は手塚新理さん。2013年に「浅草 飴細工 アメシン」として飴細工をスタートしたときは若干24歳で、なんとほぼ独学だとのこと。幼い頃から手先を動かしてものをつくるのが大好きで、クリエイティブな仕事を求めて高専卒業後、最初に就いた職業は花火師だったそうです。

その後、子どもの頃に縁日で見た飴細工に手仕事の可能性を感じ、独立を志した手塚さん。自宅の台所で猛特訓しながら、細工に適した飴の原料の研究から始めたのだそうです。
材料は基本的に水飴と砂糖なのですが、配合や温度を少しずつ変えながら、実験をしてデータを取りまた実験...と繰り返すことにより、極めた飴は浅草 飴細工 アメシンの企業秘密。その日の気温や湿度によっても仕上がりが左右されるので、配合比率はつねに変えているのだそう。
また、一般的には空気を含ませて練ることで、乳白色の飴に仕立てるのが飴細工の世界の常識でしたが、唯一、透明感のあるクリアな飴細工をつくることに成功したのです。
全国各地のイベントにひっぱりだことなり、ニューヨークにも招かれて技を披露。気泡ひとつ入っていない、まるでクリスタル細工のような金魚に、驚嘆の声が上がったといいます。
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手塚さんがもともと"魚類好き"なこともあって、浅草 飴細工 アメシンの店頭に並ぶ代表的な商品たちはこのような感じ。水に濡れたように光沢のある飴が、水生生物の質感にぴったりとあっていますね。
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このような飴細工は、1点2,980円(税込)で購入可能。また、「浅草 飴細工 アメシン ソラマチ店」では、手塚さんのお弟子さんたちによる制作実演を見ることができます。
もちろん、飴細工はすべて食べることが出来ます。少し勿体ない気もしますが。
砂糖と水飴は別のもの
もともと日本では飴といえば水飴のことを指し、平安時代から調味料として売られていました。
水飴は、米などの穀類やイモ類に含まれるデンプンから酸や糖化酵素を使って人工的に糖化させてつくられます。デンプンの中に含まれるブドウ糖やオリゴ糖類、デキストシリンなどが混合している状態で、砂糖に比べてマイルドでやさしい甘みが特徴です。一方、砂糖はサトウキビやテンサイを原料として、精製されたものです。
お菓子としての「飴」になるのは、砂糖が中国から輸入され始めた室町時代以降のこと。砂糖と水飴を煮詰めて色や味、香りを加え、冷却・成形して飴玉をつくります。砂糖と水飴の配合比率や、加える味や香りの種類や量を変えることで、全国各地でさまざまな種類の飴が誕生しました。
水飴には砂糖の結晶化を防ぐ性質があるため、添加することで口当たりをなめらかにしたり、和菓子のツヤ出しや保湿用にいまも欠かさず使われています。
浅草 飴細工 アメシン
東京スカイツリータウン・ソラマチ店
- 所 在 地
- 墨田区押上1−1−2
東京スカイツリータウン・ソラマチ4階
イーストヤード11番地 - 営業時間
- 10:00~21:00
- 定休日
- 休館日に準ず
- URL
- http://www.ame-shin.com/
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※実演時間は日によって異なるためホームページでご確認ください
営業日程カレンダー
本記事は、2020年の3月に取材をして執筆をしました。
「浅草 飴細工 アメシン 東京スカイツリータウン・ソラマチ店」は、記事公開日となる4月30日現在では休業をしています。
店舗へは、緊急事態宣言が解除され、コロナウイルスの感染への脅威がおさまってからお出かけください。