唐辛子って何者?
唐辛子は、ナス科トウガラシ属の実の総称で、原産地は中南米・西インド諸島です。
コロンブスが1493年1月15日の日誌に「カリブ海のイスパニョーラ島でたくさんの『アヒ』を発見した」と書いています。当時コロンブスが持ち帰った原種はあまりにも辛すぎるため、ただ鮮やかな果実の観賞用として栽培されただけでした。
その後ポルトガルのバスコ・ダ・ガマにより、別の品種の唐辛子がインド、アフリカ、中国へも伝えられ、わずか100年ほどで世界中に広まったといわれています。
熱帯から温帯まで気候・風土に順応する力が強く、色・形・大きさ・風味などが異なるさまざまな品種に派生して、その種類は現在では2,000種類とも3,000種類とも言われています。
日本には16世紀の後半にポルトガル経由で伝わりました。「唐辛子」といっても中国の唐から伝わったのではなく、単に外来の辛子という意味です。
唐辛子にやみつきになるメカニズム
唐辛子にはカプサイシン(Capaicin)という辛味成分が含まれていて、これを摂取すると、交感神経を刺激してアドレナリンが放出されます。アドレナリンが出るために気持ちはハイになり、身体が熱くなるとともに発汗が始まります。
驚いたことに、この「辛味」は、生理学的にいうと味覚ではないのです。味覚受容体細胞は「苦味」「酸味」「甘味」「塩味」「旨味」の5種の刺激を受け取りますが、辛味は入っていません。辛味は味覚ではなく、舌や口腔内で「痛覚」として私たちは感じているのです。
「辛い」と「痛い」が神経系に混同されて伝わるため、唐辛子を食べると痛みを和らげる「脳内麻薬」が出ることもわかっています。このため、一旦慣れると、辛いものを繰り返し欲しくなるのだそうです。激辛マニアが増えてしまうのにも、正当な理由があったのですね。
唐辛子の辛さを表すスコヴィル値とは?
化学者ウィルバー・スコヴィル(Scoville)が1912年に発案したカプサイシンの割合を測る単位。テスト方法は単純で、唐辛子のエキスに砂糖水を一定の割合で加えていき、辛さを認識できなくなる倍率を出すというものでした。当初は人間の舌で測っていましたが、機械で直接測定するようになっても名称が残っているのです。
ピーマン | 0 |
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パプリカ | 500〜2,500 |
タバスコソース | 2,500 |
ハラペーニョ | 35,000 |
韓国辛味唐辛子 | 20,000〜50,000 |
鷹の爪 | 40,000〜50,000 |
ブリッキーヌ (トムヤムクンに使われるタイのチリ) |
50,000〜100,000 |
ハバネロ | 100,000〜350,000 |
現在ギネスブックに認定されている世界一辛い唐辛子は「キャロライナ・リーパー」(スコヴィル値2,200,000)ですが、2017年には記録を更新する新種競争が加熱しているそう。
カプサイシンは局所麻酔、農薬の代用(虫除け効果)、工業用として利用法の研究が進められているといいます。
コラム:唐辛子の一番辛い部分はどこ?
ズバリ、ワタです。カプサイシンは、唐辛子の実の中央部分に種子をつけて下がっているワタの細胞で形成されます。よく唐辛子は種の部分が辛いと思われがちなのですが、ワタの部分のカプサイシンが種子の表面に付着しているために、辛いと感じてしまうのです。