株式会社ナーベ 代表取締役
岡村 英明さん
工学博士。ソニーで16年以上、ロボット犬AIBOやプレイステーションシリーズの開発現場に携わる。2012年に独立し、「日本のモノ作りを復権、現場で一人でも多くの人を元気にする」を使命として、独自のコーチングプログラムを提供。鍋を囲んでお互いに仲良くなり、モノ作りに必要なチームワークに生かしていく「日本一鍋プロジェクト」を主宰し、日本各地で年間30回の鍋イベントを開催しています。年間で、のべ300人以上の方と鍋を囲んでコミュニケーションを図っています。
メーカーの商品開発の現場にいた頃は非常に厳しい上司で、部下を精神的に追い込みかけた経験があるといいます。それをきっかけに心理学やコーチングを学び始め、職場の雰囲気を変えることに成功。メーカーから独立後、鍋の効用に注目し、自らを鍋奉行(鍋コーチングのファシリテーター)と名乗り、人材育成支援を始めました。
「人は鍋を目の前にすると、おいしいものを食べ続けたいから、ネガティブな発言をしなくなりますね。また、ふだん口ベタな人がとても饒舌になったりもします。そんな鍋の持つパワーを生かして、ものづくりを活性化させるべくアイデアを出し合う『ビジョン鍋』、部署のチームワークをよくする『社内鍋』なども提案しています」
鍋とはクリエイティブなもの
鍋は日本が世界に誇る文化。鍋に魅了され、鍋奉行を仕事にしてしまったのが岡村英明さん。年間30回行っているイベント「日本一鍋プロジェクト」は、おいしい鍋を囲めば人はいつもより饒舌になるのではないか、という仮説から始まりました。
お伺いした回に行われていた日本一鍋は、「しあわせの梅鍋」という企画でした。 何が"しあわせ"なのかというと、梅干しのこと。梅干しは長期間保存が利く食品であり、しわが寄っているものなので、このようにしわが寄るまで、しわを合わせるように夫婦仲良く末永く暮らします...という願いを込めたもので、結婚式の引き出物としても喜ばれているのです。そんな「しあわせの梅干し」を商品化した生産農家さんや、実際に引き出物に「しあわせの梅干し」を使った新婚さんらを交えて、将来の夢のお話しなどを伺いながら、鍋奉行が創作した、極上の梅干しを使った鍋を楽しみました。和室のレンタルスペースに12名ほどの参加者が集まり、鍋奉行のリードのもとで鍋をつつきながら、世代も業界もばらばら参加者が初対面同士と思えないほど、会話がはずんだ会となりました。
「鍋の場とは、食卓でありながら、料理がいままさに生み出されている創造的な場であり、囲む人々はフラットな立場であり、つながりが生まれる場でもあります。私たち日本人は戦後そのような鍋文化とともに、チームワークを育み、優れたものづくりを達成してきたといえないでしょうか?」と、熱く語る岡村さん。
しあわせの梅鍋(豚肉バージョン)
- だし汁(※1)
- 1,500cc
- 梅干し(※2)
- 4個
- 豚バラ肉
- 200g
- 白菜
- 1/4個
- ニンジン
- 2本
- タマネギ
- 1個
- シメジ
- 1パック
- ネギ
- 1本
<材料(4人前)>
(※1)だし汁は昆布とかつお節だしがおすすめ。市販のものでも可。
(※2) 梅干しは南高梅の無添加梅干しがおすすめです。
1. だし汁を火にかけ沸騰させます。
2. 沸騰したら野菜を入れて強火で煮込みます。
3. 野菜が食べられそうになったら、梅干しを入れます。
4人用の9号鍋なら、南高梅の梅干しを4個くらい入れるのが鍋奉行 岡村さんのおすすめです。
4. 豚肉を少しずつ入れます。
5. 豚肉に火が通ったら食べごろです。
鍋奉行の梅干しの愉しみ方
ポイントは、鍋に入れた梅干しをなるべく最後まで食べずに取り出さないこと。鍋の中で煮込めば煮込むほど、出汁として旨味が出続け、風味が深まります。
なお、梅干しを丸ごと入れただけの状態では、想像するほど酸っぱくはなりません。梅らしい酸っぱさが欲しい人は、練り梅や、カリカリ梅を刻んだものを別に"薬味"として用意しましょう。取り分けた小鉢のほうにお好みで追加して、味の変化を愉しむのがおすすめです。鍋プラス梅味、すごく合いますよ!
コラム ビジョン鍋や社内鍋とはどんなもの?
「鍋」とは料理を差す言葉でもありますが、もともと「なへ」の語源が「ひとつの世帯」を意味していたように、ひとつの料理を囲むことによって人の和を広げる、日本独特のコミュニティのありようを指す言葉でもあります。鍋が持っている「おいしさ」と「心暖まる場をつくる力」を、企業のブレーンストーミングやコーチングにも生かそうと、岡村氏が提案しているのが「ビジョン鍋」や「社内鍋」です。仕事のチームとも鍋を囲んで、その効果を体験してみては?