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"待つ時間"を楽しむ――大磯が誇る、鰻の名店「國よし」

Vol.40 / 2015, 02

1803年創業の「國よし」は、文士や政治家らがひいきにしていた鰻(うなぎ)の名店。時代の変化とともに人々の生活は変わっていきましたが、國よしで過ごす“ゆとりある時間”は、私たちに昔ながらの日本を思い返させてくれます。

SUNWOOD CLUB MAIL MAGAZINE Vol.40

相模湾や高麗山など、豊かな自然に囲まれる大磯町。温暖な気候から、古くは政財界の重鎮や文化人らの別荘地として愛されてきた町です。今回紹介する「國よし」は、そんな彼らもひいきにしていた鰻の名店。近年はミシュランガイドで星を獲得するなど、高い評価を得ています。

江戸時代には東海道の宿場町として栄えた大磯町で、1803年に創業した國よし。当時は"旅籠(はたご)"として、旅人に寝床と食事を提供していましたが、江戸時代末期に鰻専門の料理店へと移行しました。改装を重ねながらも、旧国道1号線沿いで町の姿を見つめてきた建物からは、当時の面影を感じられます。

改装を重ねながらも、昔ながらの面影を残す店内。座敷のほかにはダイニング席があります。
改装を重ねながらも、昔ながらの面影を残す店内。座敷のほかにはダイニング席があります。
改装を重ねながらも、昔ながらの面影を残す店内。座敷のほかにはダイニング席があります。

引き戸の先に広がる趣ある空間。店内に一歩入ると、香ばしい蒲焼きのにおいが訪れる人々の食欲をそそります。國よしの鰻は、天然の鰻が育つのと同じ期間である2年をかけて育てたもの。通常はエサを多めに与えて半年ほどで大きくするそうですが、じっくりと手を掛けることで、脂のノリや身の締まりが天然ものに近い状態になるといいます。

鰻が焼き上がるまでは30分ほど。鰻は傷むのが早く、注文を受けてからさばくために時間がかかりますが、「"待つ時間"こそ、楽しんでいただければ」と女将を務める宮代満子さんは言います。

とろけるような、ふわっとした食感の「玉子焼き」。卵の甘みと、やさしい香りが広がります。
とろけるような、ふわっとした食感の「玉子焼き」。卵の甘みと、やさしい香りが広がります。
ぷりっとした歯ごたえの「肝焼き」。新鮮ゆえにクセが少なく、食べず嫌いの人にもオススメ。
ぷりっとした歯ごたえの「肝焼き」。新鮮ゆえにクセが少なく、食べず嫌いの人にもオススメ。
女将作の「豆乳ブラマンジェ黒糖がけ」。スッとした口当たりのよさと、黒蜜の濃厚な甘さが特徴。
女将作の「豆乳ブラマンジェ黒糖がけ」。スッとした口当たりのよさと、黒蜜の濃厚な甘さが特徴。

「鰻が焼き上がるまでの間、肝焼きや玉子焼きでお酒を一杯召し上がって、のんびりしていただくのが昔ながらの過ごし方。ご予約の際に希望をいただければすぐに鰻をお出しすることもできますが、何かとスピーディーな時代だからこそ、待つ時間を楽しむのもいいのではないでしょうか」

輪島塗りの食器。新調するものもあれば、昭和時代から手直しして使っている年代物も。
輪島塗りの食器。新調するものもあれば、昭和時代から手直しして使っている年代物も。

備長炭で丁寧に焼き上げられた鰻は、関東風の辛口タレとふわっとした食感が特徴。きらびやかな輪島塗の器に入って運ばれてくるのには「高級品で特別なときに食べられてきたものだからこそ、いい器で召し上がっていただきたい」――そんな思いが込められています。

関東風をベースに、時代ごとに少しずつ味を変えている「鰻重」。鰻は薬品を一切使わずに育て、タレも無添加の調味料でつくっています。
関東風をベースに、時代ごとに少しずつ味を変えている「鰻重」。鰻は薬品を一切使わずに育て、タレも無添加の調味料でつくっています。

200年以上にわたって受け継がれてきた名店の味を求め、国内外から足を運ぶ人で絶えない國よし。宮代さんは、"一期一会"の気持ちで人々を出迎えているといいます。

「遠くは外国からいらっしゃる方もいます。来ていただいた以上は、その日一番の鮮度のいいものをお出しして、『おいしかった』と思って帰っていただきたい。そんな風に思っています」

「國よし」

【住所】
神奈川県中郡大磯町大磯1085

【電話番号】
0463-61-0423

【営業時間】
11:30~14:00(L.O)
17:00~18:00(L.O、土・日・祝は18:30まで)

【定休日】
水曜、第2・4木曜

【ホームページ】
http://www.oiso-kuniyoshi.com

※掲載の情報は発行月時点の情報であり、現在とは異なる可能性があります。