醤油のおいしさを味わう
江戸伝統の味「佃煮」入門
Vol.35 / 2014, 09
食欲の秋ということで、ごはんがおいしい季節です。ごはんの友、日本の伝統食「佃煮」をじっくり味わってみませんか?知っているようで知らない佃煮のルーツをたずねて、日本橋と新橋の老舗に伺ってみました。
Part1 江戸時代の佃煮は塩味だった?!
小魚や貝、海藻などを醤油や砂糖で甘辛く煮詰めた佃煮は、コメ文化と共に育ってきた日本伝統の保存食。その名の由来が、中央区佃島というのは有名ですが、江戸時代の佃煮は醤油味ではなく、「塩煮」だったということはご存じですか?いつ頃から醤油味に変わっていったのかは諸説ありますが、日本橋にある佃煮の老舗「鮒佐」に伝わるのは、こんなお話です。
幕末、釣りが趣味だった日本橋鮒佐の初代佐吉は、醤油で小鮒を付け焼きにした「鮒すずめ焼」を商いにしていました。1862(文久2)年のある日、品川沖でしけに遭い、佃島に漂着。佃島の漁師がつくっていた雑魚の塩煮にヒントを得て、佐吉は小魚を醤油で煮込んで売り出しました。当時はまだ醤油が非常に高価なものであったので、食通の間でもてはやされ、高級な嗜好品として人気になりました。このときの醤油煮が、現在の「江戸前佃煮」の原型を創ったといわれています。
佃煮が庶民の味として全国に広まったのは、日露戦争(1904年)の後。大量生産が可能で保存がし易いことから軍用食として調達され、戦後は兵士がそれぞれの故郷に佃煮を持ち帰ったためとされています。
日本橋鮒佐では、昭和中期の三代目金盛のときに醤油、砂糖、清酒のみで秘伝のタレ(煮込んだ後の煮汁)をつくりあげ、それに継ぎ足しながら今も使い続けています。伝統の製法を守って作られている「江戸前佃煮」は、きりっとした濃味・辛口で、醤油の後からほんのりとした甘みが舌に届きます。白いご飯に合うのはもちろんですが、熱々のだし汁をかけて食べる「佃煮ぶぶ漬け」が人気です。
商品紹介コーナー ① 日本橋鮒佐
■ぶぶ漬けお試しセット
創業以来の製法で作った江戸前佃煮5種類と、昆布と鰹の合わせだし3パックのセット。佃煮をのせたご飯の上にだし汁をかけると、だしと佃煮の醤油が上品に香り立ちます。
15g×5種類、だしパック3ヶ入り 1,080円(税込)
■牛蒡(ごぼう)
牛蒡は定番商品のひとつ。
醤油と砂糖、みりんのみで味付けられたシンプルな佃煮ながらも、創業以来続く熟成されたタレがもたらす独特の奥深さと上品な辛さ、後味の良さが自慢です。細かく刻めば、炊き込みご飯の具にもよく合います。
58g入 540円(税込)
■ まろやか浅利(あさり)
先代が創業以来の技法を守りながら、現代の嗜好に合わせて新たなレシピを作り上げました。醤油、砂糖、鰹と昆布のあわせだし、熊本のお屠蘇に使われている「赤酒」に生姜のスライスを一日つけ込んで仕上げた「まろやか浅利」は、日本酒やワイン、シャンパンに合わせるおつまみとしてもオススメです。
56g 648円(税込)
■ ごま昆布
根室産の昆布を、ほどよい甘辛さで子どもにも好まれる味に。赤酒を加え、とろ火でゆっくり煮詰めたまろやかな味が特長です。
非常に細い1mm幅に切ってあるため、お弁当やおにぎりによく合います。
70g入 432円(税込)
鮒佐のおかみ宮内 聖子さんのコメント
鮒佐の佃煮は、保存料は一切使用していませんが、約60日(夏場は約50日)は日持ちします。ただし乾燥すると食感が落ちますので、開封した佃煮は密閉容器に入れて保存してください。 また、佃煮を調味料のひとつとしてもお使いください。たとえばパスタの具や、サラダドレッシングの隠し味に、細かく刻んで使ってみてください。バターで炒めるのも、佃煮の醤油とバターの相性が良いですよ。
店舗情報
日本橋鮒佐
【住 所】
中央区日本橋室町1 - 12 - 13
【電話番号】
0120 - 273 - 123
【営業時間】
10:00~18:00、祝日は11:00~16:00
【定休日】
日曜
【Webサイト】
http://www.ganso-tsukudani.com/
マルコメが発行をしている「発酵美食」では日本橋鮒佐の工場の様子がご覧いただけます。