もういちど、手で書く楽しさ
気持ちがアガる、魅惑の筆記具
Vol.29 / 2014, 03
タブレットやスマホが全盛の昨今、メモを取るのにもペンを使わない人が増えていますが、その一方でモレスキンやグリーンウィッチなどの高級手帳もブームとなっています。どうせ持つならとことん気に入った上質な筆記具を1本は持ち歩きたいもの。
筆記具の世界でのヒット商品は4年に1度ある程度といわれていますが、最近の話題商品を追ってみましょう。
※なお今回は嗜好性の強い高級万年筆などは扱わず、比較的気軽に手にしやすいボールペン(1万円以内)に絞って、手書きの魅力や話題の製品などを紹介します。
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高木さんのペン立て。消せるボールペン黒・赤・青3本、太字低粘度ボールペン黒・赤・青3本、筆ペン風サインペン、カラーマーカー(ピンク)3種、ブルーブラックの万年筆を常に手元に置いて、コミュニケーション用・アイデアメモ用・手帳用と使い分けているそうです。
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【協力】文具朝活会
渋谷の老舗文具小売「つばめや」社員で『名刺の達人』の異名を持つ高木芳紀氏が主催する朝活。
毎週金曜に文具好きが集まり、文具談義や自慢話(?)、文具交換会などを行っています。
http://www.tsubameya.com/
私たちがペンにこだわる理由(1) デジタルメモではなんだか記憶に残らない...
携帯やパソコンはもちろん便利ですが、電池が切れたら何もできない、キーボード入力中はちゃんと耳が働かない、頭に残らない...といった感覚を持っている人は案外多いのではないでしょうか?
特にブロガーやSNSなどITを上手に活用している人ほど、パーソナルな思考ツールとしては「手書き」「手帳」にこだわっている傾向があります。さっと図解してみたり、思考過程を書きとめてみたり、仕事や学習の場では手書きだからこそ効果を発揮できることがあります。また、手を動かすことで「考え」と「身体感覚」が連動し、アイデアが出やすくなる、はっきりとした記憶に残るといった効果もあるといわれています。
私たちがペンにこだわる理由(2) 感情がこもる、愛着がわく
年賀状や業務上の手紙の、宛先とメッセージは必ず直筆で書くという高木さん。職場でも「気持ちの部分」を伝えたいときは、一筆箋や付箋にちょこちょこっと書いて貼り付けて送っているそうです。
「字が上手でも下手でも、その人のキャラや気持ちが乗っているのが手書き。デジタルでもスタンプや絵文字などで多少表現できますが、手書きの『濃さ』にはやはりかないません。例えばすごく忙しそうな人からていねいな手書きの手紙なんていただいたら、一気にファンになっちゃいますね」(高木さん)。
今のようにコミュニケーションがメールに偏っている時代だからこそ、ほんの一言、手書きの言葉を添えるだけでぐっと好感度がアップする。ワンポイントのイラストが描けたらもっと有利な時代かもしれませんね。

たとえば、感謝の言葉にイラストを添えた折り紙に入れてアメをプレゼント。総じて女性のほうが手書きコミュニケーション上手ですね。
私たちがペンにこだわる理由(3) 自己表現としての「見せペン」「勝負ペン」
パーカーやモンブランといった高級ブランドのペン、女性ならスワロフスキーのペンや真珠のミキモトのボールペンなど、ステイタスや宝飾品感覚を楽しむペンの世界もあります。
考え事をしながら眺めているだけで気分がはずむ、高級な質感やメカニカル感が好き、グリップの握り心地や書き心地が違う!など、視覚や触覚から得られる満足感も大切にしたいものです。
自分好みの1本を、まずは手頃なラインから探してみませんか?
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キラキラ美しいスワロフスキーのボールペン。欲しかった1本を手にいれて「メモをとる」気持ちもはずませましょう。
● どれがお好み? インクの種類から見たボールペン
[油性ボールペン]
最も古くからあり、海外メーカーは圧倒的に油性が多い。揮発・乾燥に強い、書いた文字が変質しにくい、筆記距離が長い、複写伝票に最適などの特長があります。水性やゲルインキに比べるとやや書き味が重たく、筆圧を要する。
[水性ボールペン]
濃くクリアな文字を、軽い筆圧で書くことができる。インクが紙に浸透し筆跡となるため、油性に比べるとにじみやすい性質がある。複写伝票には向かない。
[ゲルインキボールペン(水性)]
油性と水性の中間にあたり、静止時はゼリー状、筆圧を加えると水性ボールペン並みに粘度が低くなり、軽い筆圧でクリアに書けて早く乾くという特性がある。発色の良いインクが作れるので、多色ペンに採用されている。ただし同じサイズの油性に比べると、インクの消耗が早い。
Part 1 日本製ボールペンはここまで優秀!
1)さらさら書ける低粘度油性インクの元祖
「低粘度油性インク」を開発し、2006年に文具界に旋風を巻き起こした「ジェットストリーム」。150~1000円台の低価格なラインナップで普及しているので、ブランド名を知らないうちに使っている人も多いはず。
くせになるなめらかさ、優れた書き味に加え、高級感のあるデザインとなった大人向けのシリーズ「ジェットストリーム プライム」が2013年10月に誕生し、話題を呼んでいます。軸は多少重さがあるほうが書きやすく感じるものなので、廉価なプラスチック製から金属製に持ち替えて、書き心地の違いを感じてみてはいかがでしょうか?
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高級ライン「ジェットストリーム プライム」は3色ボールペン or 3色ボールペン+シャープの2種類。
太さは0.5mmと0.7mmが選べます。価格3,000円~5,000円
2)あると便利な「消せるボールペン」
2007年に登場した「消せるボールペン」。といっても消しゴムで消すのではなく、摩擦熱によりゲルインキを無色にするという画期的なインキで、世界100カ国で売れ続けるヒット商品になっています。パイロットでは65℃で色が消え、-20℃で復色するフリクションインキの実用化まで30年かかったといいます。
インキのカラーは現在24種類、太さは0.4mm、0.5mm、0.7mmの3種類と豊富なので、手帳用やイラスト用にと、たくさん買い揃えるファンも多いそうです。たとえばイラストなどの下書き線を、フリクションボールで書き、清書してからドライヤーを当ててきれいに消すという使い方をしている人もいます。
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2014年3月、4色ボールペンの「フリクションボール4ウッド価格3,000円(税別)が新発売に。軸の太さは3色とほとんど変わらず、軸が木製でシック。なお、フリクションボールは夏の直射日光などでも60度以上になると消えてしまうので、証書類や宛名書きには使用できません。
3)着せ替えペンの元祖
1本で3~4色使える多機能ペンはもう当たり前。でも、色も太さも自由にカスタマイズできたら、もっと使いやすくなると思いませんか? 「ハイテックC コレト」なら、軸もインクリフィルも完全に自分仕様にできるペン。インクリフィルは水性ゲルタイプで15色×太さ3種類(0.3mm、0.4mm、0.5mm)の合計45種類から3つまたは4つを選択。タッチペンやシャープペンシルも加えることができます。
※インクリフィル=別売の替え芯のこと。
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写真の「ルミオ(4色用)」は2012年のグッドデザイン賞を受賞。価格1,000円(税別)
4)リップスティックのような新機構デザインペン
時代を超えるペンを作りたいという願いが込められた「タイムライン」。収納時は口金が隠れていて、見た目がとてもスマート。これならバックの中がペン先で擦れて汚れることはないので、安心ですね。ボディを1回くるりと回すと口金が繰り出し、さらにもう一回のダブルアクションでペン先が出てくるという機構もユニークです。
計算された重量バランスによって、手にしっくりとなじむ感覚も絶妙です。
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写真は、メイクアップ小物のような「PRESENT」。他にアルミニウム素材の「FUTURE」、ウッド素材の「PAST」があります。価格3,000~7,000円
5)日本独自の"新ジャンル"
日本特有の筆記具「筆ペン」のメーカーが開発した、サインペンでもボールペンでもない新ジャンルの筆記具。芯先に適度な弾力があるのが特徴で、線幅を0.2mm~1mmまで書き分けられ、日本語の「とめ・はね・はらい」が表現できると同時に、サインペンのように細い文字も書くことができます。インクリフィルが12色もあるので、メッセージカード、日記や手帳、簡単なスケッチにも使える万能ペンとして女性に人気です。

ボールペンに慣れてきたら、筆圧で太さが変わるペンが欲しくなる。ちょっとだけ筆ペンのニュアンスを出したい人に。一体型価格350円~