とっておきの一杯を食べよう 土鍋でご飯
Vol.25 / 2013, 11
この12月に「和食」が世界無形文化遺産に登録されることが決まりました。
そんな「和食」には欠かせないご飯ですが、炊飯器まかせの人も多いのではないでしょうか。
普段食べているご飯をさらにおいしくするために、ひと手間かけて土鍋でご飯を炊いてみませんか?
土鍋でご飯を炊くと、お米にじっくりと熱が伝わるので、“ふっくらもっちり”炊き上がります。
今回は、お米の博士号ともいえる資格「お米マイスター」をお持ちの濱口さんにお話しをお伺いして、土鍋でご飯をおいしく炊く方法を教えていただきました。
<お話を伺った方>
銀座米料亭 八代目儀兵衛 女将
五ツ星お米マイスター(※)
濱口 敬子さん
※お米マイスターとは...日本米穀小売商業組合の認定資格。お米に関する幅広い知識を持ち、米の特性(品種特性、精米特性)、ブレンド特性、炊飯特性を見極めることができ、その米の特長を最大限に活かした「商品づくり」を行うなど、米の良さを消費者との対話を通じて伝える活動を行っています。
ひと手間かけた土鍋での米炊きを、
音と香りを楽しむエンターテインメントに変えてしまおう!
●土鍋の選び方~鍋物用と炊飯用はどう違うの?
土鍋といっても種類はいろいろ。ふだんの鍋物用のお鍋でもお米は炊けますが、炊飯専用の土鍋を手に入れることをおすすめします。違いは、炊飯専用のほうがより厚みがあって重く作られていること。炊飯用の土鍋は、吹きこぼれにくいように、重く底が深いかたちになっています。吹きこぼれると水加減が変わってしまい、食感も悪くなってしまうからです。
また炊飯用の土鍋は、鍋底全体に火がいきわたるような形状になっています。鍋物用の土鍋は比較的薄いため熱が速くまわり、冷めるのも速い。お米に芯が残る感じになりやすいので、使うときは火加減に注意深さが必要です。
ちなみに土鍋のサイズは2合用や3合用などと表示がありますが、その容量いっぱい焚くつもりで選ぶのではなく、1回に容量の半分から3分の2くらいしか炊かないつもりで大きめの土鍋を選びましょう。多めの量で炊くと、お米自体の重みで底のほうのお米がつぶれてしまうためです。
お米をおいしく炊くための重要なポイントは、
① 浸水(炊き始める前に芯まで水を吸わせること)
② 密閉
③ 火加減
の3つです。では順を追って説明していきましょう。
<用意するもの>
・土鍋(なるべく炊飯用)
・カセットコンロ(通常のコンロでも可)
・キッチンスケール
・キッチンタイマー
・ふきん
・しゃもじ
・米、ミネラルウォーター(軟水)
●Step1 米の研ぎ方~お米が吸う「最初の水」を贅沢しよう!
お米は最初の水を10%くらい吸いこみます。だから最初においしい水を吸わせてあげましょう。「南アルプスの天然水」のような軟水(硬度30ぐらい)のミネラルウォーター(冷水)を注いでさっと一回かきまぜ、軽く洗い流す意味ですぐ捨てます。一見、もったいないようですが、お米が糠も吸収してしまわないように、手早く捨てることが大切です。
そのあと30秒くらい研ぐのですが、研ぎ方は、シャキシャキとお米をつかんで放す、というくらいの軽さで大丈夫。水が白くにごって糠の香りがしたら、水を注いで洗い流します。その後は研がずに、水を3?4回注いで洗い流すのを繰り返すだけでOKです。いったん水をしっかりと切りましょう。
●Step2 水加減~炊く前の「30分間」の浸水がとても大切
しっかりと水を切ったら、お米の重量に対し約1.2倍の水(軟水のミネラルウォーター)に浸して置いておきます。この時、土鍋を使わず、ボールなどで浸水させてください。この、お米の芯まで水をゆきわたらせてあげるという過程がとても大切で、炊きあがりの食感をよくします。浸水時間については、夏30分、冬は1時間が理想です。
土鍋も水を吸いますので、炊く度にちょっとずつ水の量をかえて、最適な水量を見つけましょう。大さじ一杯の水でも食感が変わります。
かつては「新米の時期は水分が多いから水を控えめに」と言われていましたが、いまはいつでも米の水分量は15%に揃えて出荷されていますので、季節によって水の量を変える必要はありません。
●Step3 米を炊く~音の変化を聞きながら時間を計り、火加減を変える
浸水が済んだら、いよいよ土鍋を火にかけます。まず、強火で10分を目安に沸騰させます。(いつでも10分とはかぎりません。コンロによる差もありますので、10分後に沸騰する程度の火加減を見つけてください。見つかったらコンロのレバーに印をしておくといいかもしれません)。
沸騰したら、弱火にして8~10分くらい炊きます。水分が減ってくると、小さく「チリチリ」という音がしはじめます。また、ご飯の炊けるいい香りが立ち始めます。香ばしい香りがしたら、火を止めましょう。好みで、しっかりお焦げをつくろうと思ったら、強火に戻して、もう30秒待ってから火を止めます。
●Step4 蒸らす~火を止めて10分間は決して蓋を開けないこと。密閉が大事
蒸らしの間は「密閉」が大切です。火を止めても10分間は蓋を開けずに蒸らしてください。ただし、蒸らしすぎも禁物。長い間蓋を閉じたまま放置してはいけません。「釜返り」といって、蒸気が水に戻って落ち、ご飯がべちゃっと水っぽくなってしまいます。これでは今までの努力が台無しです。
●Step5 シャリきりをする~自分史上最高のご飯のできあがり!
蒸らしが終わったら蓋を開けて、すぐに「シャリきり」をします。底からしっかり混ぜ、水蒸気を逃がすと、お米のまわりに膜ができます。つるっとした食感の良いご飯になります。 シャリきりの方法は、お米の粒をつぶさないように、しゃもじでご飯を十字に切り、ふちを一周かき混ぜ、4分の1ずつ下から上へ、ふちから内側へとかえします。
自分史上、もっともおいしいご飯の炊きあがりです!