400年の祈りが捧げられる寺院~知恩院~『ラスト サムライ』より
Vol.4 / 2012, 02
『ラスト サムライ』の劇中に登場した、京都の「知恩院」。浄土宗の総本山であるのと同時に、境内にある10以上の建築物が国宝や重要文化財などに指定された、府内有数の観光名所としても知られています。近頃はパワースポットとしても人気の知恩院。移ろいゆく時代の中でも変わらず人々の心を癒し、豊かにしています。
清水寺をはじめ、多くの歴史的建造物が存在する東山区に建てられた知恩院。1234年、浄土宗を開いた法然の没地に建てられたもので、法然の弟子が開いていた「知恩講」という法要がその名の由来となっています。室町時代には浄土宗総本山としての地位を確立。その後、浄土宗を信仰していた徳川家康が母を弔う際に知恩院の境内を大幅に拡張し、上段・中段・下段からなる広大な寺院を築きました。
知恩院の特徴
知恩院の特徴といえば、国宝・重要文化財などの指定を受けた数々の建造物。中でも有名なのは、国宝に指定されている「三門(さんもん)」と「御影堂(みえいどう)」です。1621年に建てられた三門は、入母屋造本瓦葺(いりもやづくりほんがわらぶき)づくりで高さ24メートル、横幅50メートル、約7万枚の屋根瓦を使用。日本に現存する木造建築としては最大の二重門です。仏堂となっている門の上層部には重要文化財に指定されている仏像が安置されているほかに、天井や壁には天女や飛龍が極彩色で描かれているなど、荘厳な景色が広がっています。
御影堂
その三門をくぐり、石段の坂を上りきったところにあるのが御影堂。唐様を取り入れた和様の建築様式で、奥行き35メートル、間口45メートルの大きさを誇る本堂です。一度は火災によって焼失してしまいましたが、1639年に徳川家光の手によって再建。約400年にわたって、数えきれないほどの参拝者が祈りを捧げてきた場所です。
知恩院の七不思議
知恩院には、ほかにも「七不思議」とよばれる箇所があり、歩くとウグイスの鳴き声に似た音が聞こえる「鴬張りの廊下」、廊下の梁(はり)に置かれた長さ2.5メートル・重さ約30キログラムの「大杓子」など、境内の至るところに見どころがあります。
浄土宗が誕生した1175年頃の日本では政権による内乱、飢餓や疫病の流行、天災などのさまざまな困難が人々を襲いました。当時の仏教は学問によって経典を理解することなどが求められ、実質的には貴族だけのものとなっていましたが、法然は「念仏を唱えるだけで救われる」と浄土宗を開宗。多くの民衆に受け入れられ、不安の渦中にいた人々の心の拠り所にされたといいます。人々を支えた法然の思いは現代も受け入れられ、近年はパワースポットとしても人気です。仕事・家事・勉強など、日々を精一杯生きる人たちが癒しや活力を求めに訪れています。時の流れによって変化する街並の中で、鎌倉時代からのたたずまいを守り続けている知恩院。その景観の美しさが時を超えるのと同じように、人々の変わりゆく生活の中で変わらぬ役割を果たしています。
●知恩院へのアクセス
*JR「京都駅」下車後、
市バス206系統「知恩院前」下車、徒歩約5分
*京阪電車「祇園四条駅」下車、徒歩約10分
*阪急電車「河原町駅」下車、徒歩約15分
*地下鉄東西線「東山駅」下車、徒歩8分