北欧や北米の本格キャンプスタイルに学ぶ
さて、今号のメインビジュアルとなっている森のキャンプ地は、いったいどこにあるでしょう?
こたえは神宮前のオフィスビルの中。UPI(アンプラージュ・インターナショナル)表参道の店内に、小さな森がつくられているのです。
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ショップ全景を写すと、このような構造に!
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日本在来の野山の木を植えてハンモックを吊し、せせらぐ小川のほとりに設営された魅力的なキャンプシーンを再現してしまったUPI。この森は世界的に活躍する庭師、山口陽介氏の手によるもの。小川の水は循環させているので、なんとサワガニやメダカも棲んでいます。まるでここだけが、別世界です。
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「実際に、店に来たお客様は『すごい!』『癒やされる!』と歓声をあげられますね。このスペースは単なるイメージディスプレイではなく、実際に使い心地を試していただくためにも用意されています。曜日によっては、ここで実際に火をおこすなど、道具の使い方をデモンストレーションすることもあります」と、説明してくれたのはスタッフの井口さん。
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「キャンプを始める理由はひとりひとり、いろいろあっていいと思います。私の場合は登山から入ったのですが、頂上は目指さずにトレッキングが目的の人、自然の中でご飯を食べたい人、写真を撮るのが目的という人など、さまざまです。もともとキャンプ愛好者というのは30代の男性あたりが多かったのですが、このショップには若い男女のお客様、いわゆるライトユーザー層がたくさん来ていますね」。
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UPIが取り扱っているのは、北欧、アイルランド、北米、そして日本のアウトドアブランドなど、23社の製品。家族経営の企業や小規模企業の製品が多く、ひとつひとつの道具にはそれぞれの土地で育まれてきた文化や作り手の想いなどのストーリーが詰まっています。
「北欧のキャンプスタイルというのは、厳しい自然の下でかなりワイルド。落ちている木を集めて火をおこすなど、とことん不便さを楽しむものです。見ただけではわかりづらい道具も多いので、ショップでは『これはいったいどう使うの?』というところからていねいに説明させていただいています」とのこと。代表的なブランドを、井口さんに紹介してもらいました。
Lemmel kaffe(レンメルコーヒー)
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スウェーデンの北極圏、ラップランド発のコーヒーブランド「Lemmel」。ドリップコーヒーが考案される前、漁師や山仕事の労働者がやっていた「フィールドコーヒー」という飲み方で、ローストして粗挽きしたコーヒー⾖を直接ケトルに入れて煮だすものだそうです。
焚き火をしてヤカンを火に掛け、そして隠し味に塩をひとつまみ。最後にケトルをつかみ腕をぶんぶん振り回して、遠心力でコーヒーの粉をケトルの底に沈めてカップに入りにくくして飲みます。豪快なアウトドアのコーヒー道を、楽しんでみてはいかが?
TAKIBISM(タキビズム)
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もっと焚き火を楽しむために、日本の鉄職人が気の利いた焚き火台を創りました。丸いパンの上に薪などを載せて焚き火をし、外周部にはフライパンディッシュを置いて、保温・温め調理ができます。実際の使い方は次の写真のような感じ。
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地面に直におけるので、足元が暖かいのがタキビズムの特長。キャンプ場の環境も汚さず、安全に焚き火をすることができます。
MORAKNIV(モーラナイフ)
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創業1891年、スウェーデン中部のモーラ地方で生まれた、スウェーデン王室御用達のナイフブランド。刃の丈夫さ、握りやすいグリップで、さまざまな作業に適した上質なナイフです。アウトドア用の火起こしの道具が付属したタイプから、⽊⼯、⼦ども⽤、キッチンナイフまで、さまざまな種類があります。UPIではウッドカービングなどを通してモーラナイフの使い方を学ぶワークショップも開催しています。
Kelly Kettle(ケリーケトル)
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130年以上の歴史をもつアイルランド⽣まれの「ケリーケトル」。ガスバーナーを使わず、こんなふうに松ぼっくりや⼩枝などの⾃然燃料を拾い集めて下のトレイに入れて火をおこし、素早くお湯を沸かすことができるというエコなケトルです。
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ケトルでお湯を沸かしながら、上に小鍋をのせて同時調理も可能です。別売の固形燃料を入れて使うこともできるので、防災用としても役に立ちそうですね。
WILDO(ウィルドゥ)
WILDO(ウィルドゥ)はスウェーデンで1979年に創業した軽量で機能的な樹脂製カトラリーのブランド。
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こちらはストライカー付きのファイヤースターター、すなわち"火打ち石"。マグネシウムの棒を叩いて火花を散らせ、火種をつくれる道具です。
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上は「キャンプボックス ライト」税込1,760円、ソロキャンパーや軽食向きの弁当箱です。スープをすすったり、おかずをさしたり、90度まわしてナイフとしてスライスしたり、これ1本で便利に食事ができる「スポーク」と、2つ折りにしてケースに収納できる「フォルダーカップ」、持つ手つきの「受け皿」、「フタ」の4つからなっています。
なお、UPI表参道店ではレンメルコーヒーやクラフトビールを店内で飲むこともできます。小さな森を眺めて喉をうるおし、スタッフの体験談も楽しみながらキャンププランを練ってみてはいかがでしょう?
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UPI表参道店
- 所 在 地
- 渋谷区神宮前4-9-3
- 営業時間
- 11:00〜19:00(年末年始のぞく)
- 定休日
- 年中無休
- 電話
- 03-6804-1817
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※この記事は2021年7月29日時点での情報です。