家事も他者とシェアするのが常識の時代へ
ダスキンが1989年に始めたアメリカ発の「メリーメイド」、1999年に創業した「ベアーズ」などを筆頭として、いまや家事代行サービスを提供する企業は日本でも約600社以上に上るといわれています。今回ご紹介する「タスカジ」は2014年と後発ながら、従来とは異なる発想で急成長しているサービスです。
それは、依頼者とハウスキーパーをつなぐ「マッチングサービス」に徹していること。従来の家事代行サービスは従業員として雇い、会社がサービスを均一化して派遣しているため、教育費や管理費が利用料に上乗せされています。
これに対して、同社では登録しているハウスキーパー(タスカジさんと呼んでいます)は自立した個人事業主であり、それぞれの個性を打ち出し、多様性に富んだサービスを提供します。依頼者とタスカジさんの直接の契約となるため、1時間 1,500円〜(税込。1回3時間制)と依頼者にとっては低価格、タスカジさんには能力に応じた高時給を実現しているのです。このシステムが双方に高く評価されて現在ユーザー(依頼者)数は約8万人、タスカジさんの登録は2,500人に達しています。
「タスカジは、仕事と育児を両立しようともがいていた私自身の痛切な悩みから生まれたものです」と話すのは、今回インタビューに応じてくれた和田幸子社長。SEとしてバリバリ働きながら31歳で第一子を出産。職場に戻った数年間、夫と家事を分担しても自分の時間がまったく取れなくなり、毎日ヘトヘトだったと振りかえります。
「当時、家事代行サービスを頼むと1回あたり軽く1万円を超えていました。もう少し手ごろな価格で共働き家庭が使えるサービスがほしい、ないなら自分で作るしかない!と思い、会社を辞めて起業したんです」。
タスカジさんを通じて、
核家族から拡大家族に
「初めての方は、だいたい3人くらいスポットでお願いしてみて、相性の良いタスカジさんに定期依頼するようになるというパターンが多いですね」と和田社長。
「昨年2月、学校の休校と在宅勤務が始まった際に、お料理や作り置きの需要がグンと増えました。みなさん給食の代わりになるソリューションを求めてらっしゃったんだなあと思います。また、高齢になった親へのプレゼントとして、子どもがタスカジさんを依頼するといったケースも多くなっています」。
普段の食事だけでなく、ホームパーティーのヘルプをしてもらうという利用法もありだとか。また、タスカジさんのなかにはスイーツを専門とする人もいるので、手作りおやつの作り置きを依頼したというケースもあります。
「それは私なんですが(笑)、クッキーの生地を作ってもらって冷凍保存し、子どもの友達が遊びに来たときに焼きたてを出して喜ばれました。私が作りましたーっていう顔ができました」(和田社長)。
「ご近所の助け合いのように、タスカジさんと依頼者は対等な関係で取引するサービスですので、タスカジさんは定年はなく20〜70代まで、外国籍で在留資格を持っている人や、男性のタスカジさんもいます。男性の場合は、調理師免許を持っているとか、掃除や力仕事、高いところの作業が得意といったアピールをされている方もいて、全体の約1割ほどに達しています」(和田社長)。
タスカジさんにも事務局が行うオンライン面接と実地テストが用意され、パスしないとそもそもタスカジさんとして登録できません。家事スキルに自信があったり、育児経験がある主婦をはじめ、栄養士、調理師、フードコーディネーター、整理収納アドバイザーといった資格をもつ人など、自分の得意な家事を仕事にしたい、自由な時間に働きたい人が集まってきています。このような仕組みが、 "伝説の家政婦"や"カリスマ家政婦"としてたびたびテレビや雑誌などのメディアに登場している、スター級のタスカジさんを輩出することにつながり、書籍化されたものも多数。現在15冊、合わせて約45万部も売れたそうです。
タスカジさんは得意な分野に磨きをかけて成長することができ、依頼する家族は日常のゆとりが得られるという、好循環が生まれています。
※この記事は2021年3月25日時点での情報です。