個人所蔵のコレクションを見せるというアイデア
天王洲アイルといえば1990年代、東京ウォーターフロント再開発ブームの先駆けとなった街。流通倉庫が集積していた約20haの埋立地に高層オフィスビルやホテル、劇場が造られ、東京モノレールやりんかい線「天王洲アイル」駅で都心とつながりました。"島(アイル)"の周囲は板張りのボードウォークが張り巡らされ、運河に面して公園やテラスレストランが連なっています。夜は水面に映るライトアップが美しく、まるで外国の港町にきたようなムードのある風景が人気です。
そして2020年12月12日に、寺田倉庫が本社の1〜2階にオープンさせたのが「WHAT(ワット)」。「WAREHOUSE OF ART TERRADA 」の略だといいます。これまで倉庫事業者として美術品の保管を請け負ってきた同社が、「倉庫に眠る貴重なアート作品を公開すればおもしろいのでは?」というアイデアを思いつき、誕生したのがこの現代アートのミュージアム。WHATの4文字が見え隠れしているようなロゴは「倉庫を開放し、普段見られないアートを覗き見する」 というコンセプトが表現されています。
「WHAT」のこけらおとし展となった展覧会は2つ。1つめが「- Inside the Collector's Vault, vol.1 - 解き放たれたコレクション」展です。日本を代表する現代アートコレクター2人の、秘蔵のコレクションを観ることができます。
精神科医でもある高橋龍太郎氏(写真上の絵の人物)は、今まさに収集中のコレクション約2,000点のなかから、"描き初め"をテーマに30点を公開。草間彌生さんや会田誠さんといった有名なアーティストから最近の若手までの作品が並びます。
作家の執念のような何かかがほとばしる巨大な作品や、タッチの迫力から得られる衝撃! 現代アートの醍醐味は、やはり本物を目の前にして観る人がカラダで感じるものだと思いました。
作品解説は自分のデバイスでQRコードを読み取る方式となっています。高橋氏のコレクションでは、コレクター自身の肉声で作品の魅力や、コレクションを始めたきっかけなどの語りを聞くことができるのも、この展覧会のポイントです。コレクター本人の想いと共に作品を観ることで、自分もまるでコレクターとして初めて作品に向き合ったような気分を味わうことができ、感動や共感が高まります。
一方、某上場企業の代表で投資家の匿名コレクターA氏は、2001年から奈良美智のコレクションを始めたそうで、奈良作品が一堂に40点!なかには彫刻作品も含まれていて見応えがあります。
会期は2021年5月30日(日)までですが、A氏の展示は途中でコレクションの入れ換えもあるそうなので、ぜひ奈良美智ファンは足を運んでみてください。
大勢の人が観る・知るまえのレアな作品に出合えるWHAT。未来の美術館を先取りして観ているような、得した気分が味わえる展覧会でした。
もう1つの開催中の展覧会は「謳う建築」。
「住まい」と向き合い続けた建築家が生み出した住空間の建築模型を展示しています。さらに、その実際の住まいを有名な文芸家や詩人が訪れ、そこで感じたインスピレーションを詩にするというユニークな試みの展覧会です。
たとえば、詩人の谷川俊太郎が、建築家の篠原一男に依頼して1974年に建てた家の模型が、その家を想い、谷川俊太郎が書き下ろした新作の詩とともに展示されています。会場では、展示されている家の図面が入ったパンフレットも手に入れることができます。
詩人たちの豊かな言葉によって、空間と人の精神との関係や、人生における住まいの大切さが再認識されるような展覧会でした。
WHAT
- 所 在 地
- 品川区東品川2-6-10 寺田倉庫G号
- 営業時間
- 11:00~19:00(最終入場は18:00)
- 定休日
- 月曜休館(祝日の場合翌火曜休館)
- 料金
- 一般1,200円、大学生/専門学校生 700円、高校生以下 500円
- URL
- https://what.warehouseofart.org/
※この記事は2020年12月24日時点での情報です。