世界でもめずらしいBean to Bar(※)
ホワイトチョコレートが生まれる青山の工房を見学
※Bean to Bar
直訳すると「豆から板へ」。つまり「カカオ豆」から「板チョコ」までの全工程を一貫して手掛ける製法のこと。ココジカのバックナンバーでも紹介しています。
ココジカ vol. 75 チョコレートは豆から選ぶ時代?ビーントゥバー入門
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ここは青山一丁目にある青山ツインタワービル。地下一階にホワイトチョコレートの専門店CHOCOLATIER PALET D'OR BLANC(ショコラティエ パレ ド オール ブラン)では、カカオ豆からホワイトチョコレートを作るまでの工程をガラス越しに見ることができます。
それではパティシエのみなさんのお仕事を教えてもらいましょう。
① 原料のカカオ豆をローストする
まずは原料のカカオ豆をチェックし、選別するところからショコラティエの仕事は始まります。ゴミや不純物、割れ豆や未熟豆、傷んだ豆などをきれいに取り除いてからローストします。
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② 粉砕
ローストしたカカオ豆を、粉砕する機械に投入します。皮は遠心力でふきとばしながら、豆を荒く砕いておきます。
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③ 回転しながらすりつぶす
カカオ豆をさらに細かくすり潰していくと、何も足していないのにどろどろの液体状に!この状態は「カカオリカー」と呼ばれ、まだカカオ豆100%です。この段階で、原料の豆の状態から重量換算で70〜80%程度に目減りしています。ここまでは通常のチョコレートの製造方法と同じです。
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④ 搾油し、色が徐々に透明になっていく
次にカカオリカーを不織布にくるんで圧力をかけ、搾っていきます。プレスしたての段階ではチョコレート色なのですが、徐々に透明に近いオイルに変わっていきます。このオイルが、ホワイトチョコレートの原料となる油脂分「カカオバター」。原料のカカオ豆の約40%(重量換算)程度しかとれない貴重なバターです。
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ちなみに、カカオバターを搾った後に、機械に残った食物繊維の豊富な部分は「カカオケーキ」と呼び、ココアの原料などに使います。機械から取り出し固めると、下のような状態になります。

実はホワイトチョコレートは、大手のメーカーでさえカカオバターを輸入して作っているところが大半。搾油を見られることも貴重です。
このカカオプレス機は、胡麻油などを搾油する機械をカカオ用に改良したものだそうです。そこまでしてしまう自家製ホワイトチョコレートづくりへの情熱に脱帽です!
⑤ コンチング
カカオバターに粉ミルクと砂糖を加えて、撹拌する機械に入れます。それぞれの粒子を細かく混ぜ合わせるために撹拌し続けること、なんと丸4日間!
これだけの時間をかけることによってカカオバターが均一に行き渡り、滑らかな口溶けの良さが生まれ、香り高いアロマが引き出されるのだそう。
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こうして「ホワイトチョコレート」といえる状態になりますが、ショコラティエ パレ ド オール ブランの製品となるにはまだ先が...。ボンボンショコラの製造工房に送られ、三枝俊介シェフのクリエイティブを経てようやく、斬新な板チョコやショコラに生まれ変わるのです。
産地別のまま自家製ホワイトチョコレートも製造

ショコラティエ パレ ド オール ブランでは産地の異なる5種類以上のカカオ豆を使っていますが、それぞれの味わいを生かすために産地別のまま自家製ホワイトチョコレートも製造しています。豆から作っているホワイトチョコレートのBean to Barは、日本はもちろん世界でも初の試みなのだそう。自らの手でカカオ豆からチョコレートに仕上げるという夢のため、パティシエからショコラティエに専念した三枝俊介シェフの挑戦は、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも取り上げられているので、関心のある方はNHKオンデマンドでどうぞ。
※この記事は2020年2月27日時点での取材による情報です。