※厳密には、渋谷区広尾と港区東麻布の2つの区境なのですが、ここではまとめて広尾エリアと呼ぶことにします。
有栖川宮記念公園を中心とした緑豊かな住宅街
恵比寿、六本木、西麻布といった不夜城のような繁華街から徒歩圏内にありながら、都心の喧騒とは無縁な「広尾」。なりたちを紐解いてみると江戸末期、最初のアメリカ合衆国公使館が元麻布の善福寺境内に置かれ、伊豆の下田からタウンゼント・ハリスがやってきて初代駐日公使に着任したことが、大使館のまちとしての始まりでした。一説には、日本の高温多湿な風土が苦手な欧米人にとって、風通しがよく快適な高台に位置し、なおかつ江戸城への往来も便利な場所として、このエリアが選ばれたといわれています。
明治維新後は、皇族や華族の屋敷が多く建てられ、高級住宅地としての土地柄を築いていきました。その面影を、色濃く残しているのが「有栖川宮記念公園」です。旧有栖川宮は江戸初期から続く世襲の宮家でしたが後継がなく、その祭祀を継いだ高松宮殿下が1934(昭和9)年にこの地を東京に賜与し、子どもたちの遊び場となることを望んで一般開放させたものです。
「有栖川宮記念公園」は、江戸末期は盛岡南部藩下屋敷の庭園でした。このため実際は公園というよりも、丘があったり渓谷や池があったりと非常に起伏に富んでおり、野趣あふれる日本庭園と呼んだほうがふさわしいかもしれません。特に公園正面の広尾口を入ってすぐのところにある池の風情は、まるで山深い里にいるかのようで、ここが都心であることを忘れてしまいそうです。
池で釣り糸を垂れる人、写生を試みる人、大木の間を走り回って遊ぶインターナショナルスクールの子どもたちなどで平日も賑わっている有栖川公園。ニューヨークのセントラル・パークを思わせるこの公園が中心にあるからこそ、広尾のまちがさらに外国人ファミリーに人気を博していることもうなづけます。
オープンカフェ文化の発信地
広尾の二つ目の特徴が、外国の街角のようなオシャレなカフェが多いこと。都心有数の文教地区であるため、大使館やインターナショナルスクールが点在し、日本では珍しい華やかな街並みが見られます。
今年4月7日、聖心女子大学の入口に新しいオープンカフェが新装開店しました。「カフェ ミケランジェロ広尾」。代官山の旧山手通りにある一軒家カフェ「カフェ ミケランジェロ」の姉妹店ですが、このカフェを運営する「ひらまつ」もまた、広尾で生まれ、広尾から羽ばたいた企業のひとつです。
「カフェ ミケランジェロ広尾」が新装オープンする場所には、1993年から広尾のシンボルとなったオープンカフェがありました。「カフェ・デ・プレ」の名を覚えている方もいるでしょうか。ひらまつが最初に手掛けたカフェで、フランスのカフェスタイルを本格的に日本に導入したのがこの店です。
当時は、道路を向いてコーヒーを飲むこと自体が珍しく、堂々と1人で表に座っているのは、欧米人ばかりということもありました。日本人客からは「水もおしぼりも出てこない」と叱られることもあったそうです。ミネラルウォーターを買うというのも新鮮な時代でした。
カフェ・デ・プレは「ひとりでいて、孤独でない空間」という徹底したコンセプトを貫くことで、カフェ文化を日本に定着させることに貢献した第一号店でした。その後、ひらまつ自身もフランスやイタリア文化の普及を目指し、高級店だけでないレストランの多様化や、レストランでのウエディングを始めるなど新たな挑戦を続け、高級レストラン業界初の東証一部上場を果たすのです。
今回、新しくなる「カフェ ミケランジェロ広尾」では、クラシックな雰囲気のイタリアのカフェを再現。朝の7時から営業、自家製ブリオシュのベネディクトなど朝限定のメニューが味わえます。朝の散歩に立ち寄ったり、Free-WiFiを使ってちょっと仕事をしたり、ペット同伴でのひとやすみも可能です。
夜は23時まで営業。スタンディングカウンターで仲間と軽く一杯飲みながらくつろぐなど、思い思いのスタイルで、気軽に立ち寄れるのが魅力です。
また、地下にはカジュアルなトラットリアも誕生しました。シンプルで飽きの来ない定番のイタリア料理を、一人でもゆったり落ち着いて食事ができるよう空間づくりがされています。
Information
カフェ&トラットリア ミケランジェロ広尾
所 在 地:港区南麻布5-1-27(広尾駅4番出口徒歩0分)
電話番号:03-3448-0643
営業時間:7:00〜23:00(トラットリアは11:00〜15:00、17:00〜23:00)
定休日:火曜
URL:https://www.hiramatsurestaurant.jp/michelangelo-hiroo
※この記事は2019年4月26日時点での取材による情報です。価格や営業時間などは変わることがありますのでご了承ください。