食で味わう映画の世界
フルーツタルト「洋菓子店コアンドル」より
Vol.22 / 2013, 08
東京の住宅街にあるオシャレな洋菓子店を舞台にした、ほろっと泣けて、くすっとして、ジーンとする映画、「洋菓子店コアンドル」から、フルーツタルトのレシピをご紹介します。
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恋人を追いかけて、鹿児島から上京したなつめ(蒼井優)は、中目黒の洋菓子店コアンドルで働くことになります。見習いパティシエの成長物語を軸に、伝説のパティシエ十村(江口洋介)の過去にまつわる伏線、そして、スウィーツを通して描かれる人間模様などを絡めて、「生き方」について、考えさせられる映画です。淡々として、無駄のない場面展開、戸田恵子や加賀まり子などの演技も魅力的です。
主人公のなつめは強情で、思い込みが強くて、自信家の女の子。彼氏からの別れの手紙も認められず、その自分勝手さに周りもあきれるばかり。しかし、そんな彼女だからこそ、天才パティシエにも堂々と意見してしまえるのです。そんなやんちゃで子供みたいな主人公を蒼井優が、かわいらしく演じています。そして、物語のもう一人の主役、誰が見ても訳あり風に登場した江口洋介は、ちょっと影があって腕の利く職人的な役がよく似合います。
そして、冒頭シーンから見るものを釘づけにしてしまう美しいスイーツの数々も、堂々と主演クラスの働きをしています。その中から今回作ったのは、「フルーツタルト」。回想シーンの中で登場するこのお菓子は、急遽追加注文を受け、江口洋介演じる十村とスタッフが総がかりで手際よく作り上げていきます。小麦粉とバター、あとは上に乗せるフルーツがあれば出来ます。
夏場ですので、タルトのフィリングはカスタードクリームに。ダマになりにくい米粉を使って、電子レンジで注意深く加熱すれば失敗しません。フルーツもスーパーなどで売っているカットフルーツを使えばお手軽です。土台となるタルト生地は、ビスケットみたいにさくさくとした食感。ぜひチャレンジしてみてください。めん棒で生地を伸ばせば、パティシエ気分になるかもしれません。
レシピ「フルーツタルト」
4人分
調理時間 1時間40分
《タルト生地の材料》 | |
---|---|
薄力粉 | 120g |
粉糖 | 大さじ1 |
塩 | ひとつまみ |
無塩バター | 60g |
冷水 | 大さじ1~2 |
グラニュー糖 | 大さじ1 |
《カスタードクリームの材料》 | |
全卵 | 1個 |
卵黄 | 1個分 |
グラニュー糖 | 40g |
米粉 | 30g |
牛乳 | 300cc |
無塩バター | 10g |
バニラオイル | 少々 |
お好みのフルーツ(缶詰やカットフルーツなど) | |
あんずジャム | 大さじ3 |
ミントの葉 | 少々 |
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[作り方]
下準備として、19cmのタルト型にバター(分量外)を薄く塗って、薄力粉をはたいておく。
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1.パイ生地を作る。冷水以外の材料をフードプロセッサーに数秒かけては止め、パン粉状にする。ボウルに移してスプーンで少しずつ冷水を注ぎ、ディナーナイフで切るようにさっくりと混ぜる。両手でギュッと押してかろうじて固まるくらいになったら、ラップに包み、冷蔵庫で30分以上休ませる。
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2.この間にカスタードクリームを作る。耐熱ボウルに米粉、グラニュー糖、卵を入れ、泡だて器ですり混ぜる。そこに ひと肌に温めた牛乳を混ぜ入れる。
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3.600Wのレンジで1分間加熱し、取り出して泡だて器でよく混ぜる。1分加熱、取り出して混ぜるを2、3回くりかえす。
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4.好みの柔らかさになったら、仕上げにバターとバニラオイルを加え、なめらかになるまで泡だて器で混ぜる。表面が乾燥しないようにラップをぴっちりかぶせて冷やす。
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5.オーブンを220℃に温める。タルト生地は冷蔵庫から出し、打ち粉をしてめん棒で伸ばす。タルト型に敷いたら、フォークで穴をあける。
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6.その上からクッキングシートをかぶせて、タルトビーンズなどで重しをして10分焼き、シートをはずして、さらに8分ほど焼く。いったんオーブンから出し、グラニュー糖を大さじ1ほど振って1~2分焼いたら、オーブンから出して冷ましておく。
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7.パイにカスタードクリームを入れ、フルーツを飾れば出来上がり。あんずジャム大さじ2を裏ごししたものを小鍋で煮詰め、熱いうちに表面に塗るとツヤが出て美しい仕上がりに。
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DVD情報
『洋菓子店コアンドル』
・発売日:発売中
・発売・販売元:ポニーキャニオン
・価格:¥4,935(税込)
©2010『洋菓子店コアンドル』製作委員会
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監督:深川栄洋
出演:江口洋介/蒼井優/戸田恵子/江口のりこ/尾上寛之/粟田麗 他
甘くない人生に、ときどきスイーツ。きっと幸せになれる。
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洋菓子店を舞台に、伝説のパティシエと上京したてのケーキ屋の娘が、挫折を乗り越え再生していく姿を『神様のカルテ』や『白夜行』の深川栄洋監督が描いた。伝説のパティシエ・十村遼太郎役を『はやぶさ 遥かなる帰還』の江口洋介が、十村と出会うケーキ屋の娘・臼場なつめ役を『るろうに剣心』の蒼井優が演じている。その他、『ステキな金縛り』の戸田恵子や『横道世之介』の江口のりこなどが脇を固める。作中に登場する美味しそうなスイーツの数々も見どころだ。
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伝説のパティシエと呼ばれながら、とある理由によりスイーツ界から身を引いた十村遼太郎 (江口洋介)。昔馴染みのパティシエ、依子(戸田恵子)が経営する洋菓子店「パティスリー・コアンドル」に立ち寄った十村は、そこで恋人を追って鹿児島から上京したケーキ屋の娘、臼場なつめ(蒼井優)と出会う。見習いとして「コアンドル」で働き始めるなつめは、依子や仲間たち、常連客に支えられながら、一生懸命に自分の居場所を見つけようとしていた。そんな彼女の姿に十村の心は動かされ、少しずつ過去と向き合い始めていく。